【SOPRA・VIVERE】1章-4
遊歩道を歩く人々の足音と弾む会話。
さらさら、と遊歩道に植えられた街路樹が春風に吹かれて鳴る梢の音。その度に木漏れ日は形を変え、真白いスケッチブックに模様を作る。
しかしシャルティエルはそれらを気にも留めず、静かに鉛筆を走らせてゆく。
目線の先にはもう一つの遊歩道と、その間を流れる運河の水面を渡る小舟。シャルティエルはそれらを白と黒の世界として描いていった。
しかし、シャルティエルは鉛筆を握る手を止めた。そして無造作にスケッチブックを捲っていく。
白い画用紙の上にはどれも同じような街の風景ばかりが広がっていた。
シャルティエルは深呼吸して木陰から出ると、大きく背伸びをした。
――疲れた。
モニカの家に留まって二週間。夜盗の集団とやらは一向に捕まる気配を見せない。
日を追うごとに街全体の空気が緊迫していくのが解った。特に旅行者への厳しい視線に息が詰まりそうだ。
それだけではない。
あの女、モニカは食事から何から世話を焼き、あれこれ人のことを聞きたがる。
好きな食べ物は何かとか、出身はどこなのかとか……あとは忘れたが、それがシャルティエルには重荷だった。だから極力あの女とは行動を共にしないようにしている。
これで何もする事がないとなると、本当に気が滅入ってしまう。
シャルティエルは長いため息を吐いて、だただた流れる運河をぼんやりと見つめた。
「シャルティエル殿?」
振り返ると、背の高い短髪の男がシャルティエルの後に立っていた。
「エドウィン……さん」
「何をなさっていたのですか?」
エドウィンはシャルティエルの隣に立った。彼もまた、運河を眺める。
「……散歩してただけ」
やや視線を下げて答えるシャルティエルにそうですか、とエドウィンは表情なく頷く。
シャルティエルはこの男が苦手だった。無口で、何を考えているのか解らない。
暫しの沈黙が二人を包む。
先に痺れを切らしたのはシャルティエルの方だった。ねえ、とエドウィンの方を見る。
「いつになったら規制が解けるんだろうね。……俺、あのお嬢さんのこと苦手なんだよね。ちょっと、お節介だし」
一瞬エドウィンはシャルティエルを睨みつけるかのように鋭く見た。が、すぐに表情を和らげる。
「お嬢様はお話し相手が出来て嬉しいのです。お嬢様のご両親はあまりこちらには帰って来ませんし、今はお友だちもいないようですから」
「どうして? あの子の傍にはあんたがいる」
エドウィンは謙遜するように首を横に振った。
「シャルティエル殿がお屋敷に来てから、お嬢様は本当に楽しそうにしておられます。私には、あのようなお姿は見せては下さりませんでしたよ」
ぎこちなく微笑むエドウィンにシャルティエルは困惑する。どのように答えて良いか解らなかった。
「確かに、あなたには窮屈な思いをさせてしまっていますが、規制が解けるまでご辛抱を。我々にお任せ下さい」
「? 我々に、って……エドウィンさんも都市警備隊の人、じゃないよね」
「私は自警団の一員として都市警備隊と連携して都市を巡回しています。まぁ、状況はあまり変わっていませんが」
苦々しい顔をするエドウィンに対して、シャルティエルは幸運が舞い込んできた、と目を見開く。
「エドウィンさん」
シャルティエルは一歩前へ踏み出した。エドウィンは半歩後ずさる。
「俺も、その自警団に入れて欲しいんだけど」
シャルティエルの申し出に、エドウィンは目を丸くした。
To be continued……
微妙な訂正を。
時間は作るもの、時間は作るもの……(´・ω・`)
さらさら、と遊歩道に植えられた街路樹が春風に吹かれて鳴る梢の音。その度に木漏れ日は形を変え、真白いスケッチブックに模様を作る。
しかしシャルティエルはそれらを気にも留めず、静かに鉛筆を走らせてゆく。
目線の先にはもう一つの遊歩道と、その間を流れる運河の水面を渡る小舟。シャルティエルはそれらを白と黒の世界として描いていった。
しかし、シャルティエルは鉛筆を握る手を止めた。そして無造作にスケッチブックを捲っていく。
白い画用紙の上にはどれも同じような街の風景ばかりが広がっていた。
シャルティエルは深呼吸して木陰から出ると、大きく背伸びをした。
――疲れた。
モニカの家に留まって二週間。夜盗の集団とやらは一向に捕まる気配を見せない。
日を追うごとに街全体の空気が緊迫していくのが解った。特に旅行者への厳しい視線に息が詰まりそうだ。
それだけではない。
あの女、モニカは食事から何から世話を焼き、あれこれ人のことを聞きたがる。
好きな食べ物は何かとか、出身はどこなのかとか……あとは忘れたが、それがシャルティエルには重荷だった。だから極力あの女とは行動を共にしないようにしている。
これで何もする事がないとなると、本当に気が滅入ってしまう。
シャルティエルは長いため息を吐いて、だただた流れる運河をぼんやりと見つめた。
「シャルティエル殿?」
振り返ると、背の高い短髪の男がシャルティエルの後に立っていた。
「エドウィン……さん」
「何をなさっていたのですか?」
エドウィンはシャルティエルの隣に立った。彼もまた、運河を眺める。
「……散歩してただけ」
やや視線を下げて答えるシャルティエルにそうですか、とエドウィンは表情なく頷く。
シャルティエルはこの男が苦手だった。無口で、何を考えているのか解らない。
暫しの沈黙が二人を包む。
先に痺れを切らしたのはシャルティエルの方だった。ねえ、とエドウィンの方を見る。
「いつになったら規制が解けるんだろうね。……俺、あのお嬢さんのこと苦手なんだよね。ちょっと、お節介だし」
一瞬エドウィンはシャルティエルを睨みつけるかのように鋭く見た。が、すぐに表情を和らげる。
「お嬢様はお話し相手が出来て嬉しいのです。お嬢様のご両親はあまりこちらには帰って来ませんし、今はお友だちもいないようですから」
「どうして? あの子の傍にはあんたがいる」
エドウィンは謙遜するように首を横に振った。
「シャルティエル殿がお屋敷に来てから、お嬢様は本当に楽しそうにしておられます。私には、あのようなお姿は見せては下さりませんでしたよ」
ぎこちなく微笑むエドウィンにシャルティエルは困惑する。どのように答えて良いか解らなかった。
「確かに、あなたには窮屈な思いをさせてしまっていますが、規制が解けるまでご辛抱を。我々にお任せ下さい」
「? 我々に、って……エドウィンさんも都市警備隊の人、じゃないよね」
「私は自警団の一員として都市警備隊と連携して都市を巡回しています。まぁ、状況はあまり変わっていませんが」
苦々しい顔をするエドウィンに対して、シャルティエルは幸運が舞い込んできた、と目を見開く。
「エドウィンさん」
シャルティエルは一歩前へ踏み出した。エドウィンは半歩後ずさる。
「俺も、その自警団に入れて欲しいんだけど」
シャルティエルの申し出に、エドウィンは目を丸くした。
To be continued……
微妙な訂正を。
時間は作るもの、時間は作るもの……(´・ω・`)
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